不器用な彼女
「時間がないんですけど、親にも相談してみます。折角授かった命を…精一杯考えてみます」

「それが良いね」

詩織は自分の名刺を手帳から取り出すとお爺ちゃんに渡す。

「櫻井詩織と言います。…また悩んだら…ここに来ても良いですか?」

「いつでもどうぞ」

お爺ちゃんは優しく微笑んだ。




詩織は太田医院を後にする。

お爺ちゃんに話したら少し悪阻も気持ちも楽になった気がする。

この子を産みたい!そう強く思った。

世の中には未婚の母だって大勢居るのだ。子供を愛する気持ちがあればどんな困難も乗り越えられる気がして来た。

ひとまず、月曜日は産婦人科に行って、その足で実家に帰ろうと思った。
母の心配してる顔、父の悲しい顔が眼に浮かぶけど…。


そんな事を考えながら駅のホームに立つ。


そして…スイッチが切れたかのように詩織はその場に崩れた。


遠くから聞こえる悲鳴。救急車のサイレンの音。そのまま意識を手放した。


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