不器用な彼女

決断

「櫻井、ちょっと来い」

仕事中珍しく社長に呼ばれる。

来客用ソファーに踏ん反り返る社長。向かい側の席に座るよう言われる。

「最近またダメか?」

呼ばれた理由は分かっている。最近仕事に身が入ってないからだ。
繰り返す小さなミス。“コイツは使えねぇ”とクビを切られるんじゃないかと心配になる。

社長と一美のデート現場に遭遇し、あの日確かな自分の気持ちに気付いた。


“胸がギュッとするのも、泣きたくなるのも、それは恭介が好きな証拠”

そうカツミに言われてやっと自覚した。
自分は社長に恋してるって。


好きな人(社長)が好きな人(一美)とくっつき、その二人と一緒に働かなきゃならない辛さ。自分の気持ちに蓋をしようとしても、忘れようとしても、『好き』の気持ちは膨らむばかり。。。

社長も一美もデート現場を見られた後も詩織に対する態度は変わっておらず、そして何の話もない。

「実は社長と付き合ってるの〜」とか言われた方がまだマシだ。
一美が詩織に話したかった事は社長の事だったのか?
言いづらいのか?

気持ちの整理も、コントロールも出来ずモヤモヤ。
恋煩いなのか食欲もなく体重も落ちていた。

「顔色が悪いし…少し痩せたんじゃねえか?」







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