二番目でいいなんて、本当は嘘。
マンションの地下駐車場に置かれていた黒のBMWの助手席に乗せてもらう。
革張りの椅子がやわらかく体を包みこみ、祖父が愛用していた軽のライトバンとは天と地ほどの差があった。

「自宅は店の近くですか?」

社長は祖父の寿司屋の常連客だったが、さすがに自宅に来たことまではない。

「家は、店の裏側なんです」
「じゃあ、車は停められそうですね」
「いえ、近くまで送ってもらうだけで結構です!」

こんな目立つ車が家の敷地に停まっていたら、近所の人から何を言われるかわからない。

「残念です。シズクに会いたかったなあ」

意外にも社長は、相当な猫好きのようだった。
< 32 / 250 >

この作品をシェア

pagetop