二番目でいいなんて、本当は嘘。
そのとき、時計が午後5時のアラームを鳴らした。

「じゃあ、私、帰りまーす」

私を自分のデスクに座らせたまま、すずはいちばん下の引き出しを開け、自分のバッグを取りだした。

「ちょっと、島本さん! 明日の朝イチで使う資料だろ!?」

ディレクターが顔を青くしてその場で立ちあがる。
消去されたと思っていたデータのありかを見つけたものの、まだまだするべき作業はあるらしい。

「なんか川谷さんのほうが仕事できそうだから、彼女にお願いしまーす」
「はあ?」

唖然とするスタッフ全員を尻目に、すずは
「それじゃ、お疲れさまでしたー」
と言ってオフィスを出ていった。


――ツワモノだ。

前の会社の後輩、元カレの一紗を奪った子もすごかったけれど、島本すずはそのはるか上を行く。

でも、裏でこそこそ陰湿なことをするよりも、あっけらかんとしている分、まだいいのか――?
< 56 / 250 >

この作品をシェア

pagetop