やさしく包むエメラルド

「小花」

お皿を片付けようとしたわたしの手を啓一郎さんが引いて、すぐ目の前に座らされた。

「改めて、誕生日おめでとう。来年から、十年後も、二十年後も、一番最初に言うって約束するから」

「うん。わかった」

強く握っていた啓一郎さんの手から力が抜ける。

「あの、意味わかってる?」

「わかってる、わかってる」

「大事な話だよ?」

「わかってるって」

「…………そう? それならいいけど」

落ち込み気味に離れかけたその手を、両手で握り直した。
本当の本当にわかってる。
嬉しくて恥ずかしくて、まともに受け取ったら破裂しそうなほど。

啓一郎さんに言われてからちょっと調べた。
“比翼の鳥”は片方ずつしか羽のない鳥で、ふたり一緒でないと飛べないらしい。
“連理の枝”は死して尚引き離された夫婦のお墓から木が育ち、互いを求め合って絡まった故事に由来するそうだ。
とても強い結び付きの話。
それでも思う。

「啓一郎さん」

「ん?」

「並んで飛ぶ鳥を、手を繋いで見ましょうね」

「へ? ……ああ、うん」

「枝を絡ませ合う木の下でカレーライス食べましょうね」

「そうだな」

啓一郎さんは吹き出すように笑って、

「金剛力士像みたいに」

と付け加える。それから誓うように真摯な深いキスをくれた。

「ふふふふ! “極濃”!」


鳥にも枝にもなりたくない。
わたしはわたしのまま、啓一郎さんは啓一郎さんのまま、エメラルドの風に包まれながら、こんな風に生きていきたい。







end.


< 104 / 104 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:99

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

風が吹いたら

総文字数/16,069

恋愛(純愛)17ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
もうずいぶん昔のこと ずいぶん昔のある夏の日 風が吹きました それまで一筋も吹かなかったのに、突然 わたしは、あなたが風を呼んだのだと思いました アンソロジー『百華ノワール』寄稿作品 R5.12.26~12.28
薔薇節 ━━しょうびせつ━━

総文字数/15,033

恋愛(純愛)15ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
将棋指しなんて、ろくなものではありません それを知ったのは 嫁いできた日のことでした *「大正時代×恋×花」のアンソロジー『大正花暦』寄稿作品(担当:秋、薔薇)です。 R5.1.1~1.4 わさびーず様 レビューありがとうございました。 いただいたお言葉は大切にいたします。
DEAR MY LIAR

総文字数/17,778

恋愛(純愛)20ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
だからいつも言ってたのに 「おじちゃん、ちゃんとして!」って。 あのとき笑い飛ばしてくれたら 積み上げた嘘をつき通してくれたら わたしはこんな孤独を 知らずにすんだのに H30.10.8

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop