2570 ー男子高校生とOLー
ははは...
私たちは顔を見合わせて笑うと、膝まで海水に浸かりながらなんとなく同じ方向へ歩き出す
自分の頭の中を整理するため
大きく手を振って歩く仁香に対し、ぽつりぽつりと零すように先ほどの状況を説明した
「一緒に来てるリクちゃんって女の子がナンパされてたから助けたの」
「ほぅ」
「でも怒られて。ナンパされに来てるって」
前を向いていた仁香は、急にこちらを向いて立ち止まる
「なんでぇ?」
仁香とは視線を合わせず
私も前を向いたまま立ち止まった
「変だよね、みんなと遊びに来てるのに。しらないお兄さんと遊ぶ必要なんかない」
遠く視線の先には
今の私たちのように、膝まで海水に浸かってジッと立っているリクちゃんがいる
彼女が見つめているのは
五月だ
「あー、リクちゃんってあの子?」
仁香が勘付いてニヤリと笑った
「なるほど、五月くんが好きと。でも五月くんの視界に自分は入らなくて。五月くんにとって自分は大勢の女子の中の1人で......」
「多分ね......五月くんに選ばれない」
「だからナンパされて確かめてたんだ。自分は選ばれる人間だと」