2570 ー男子高校生とOLー
「お疲れでーす」
「お疲れ様です」
軽い挨拶をする木田の先導で、2人は部室に入る
「っすー」
「おつかれ」
そう返事を返してきたのは、2人の先輩である3年生の桜庭(サクラバ)と筑紫(ツクシ)だ
2人は長椅子に腰かけて既に弁当を食べ始めていた
長らく部活をやっていると、弁当を食べる場所なんてのはだいたい固定化してくる
外のベンチや屋上、体育館の隅、自分たちの教室.....
そしてこの四人はここ、部室が定位置であった
普段から先輩と後輩が混ざって昼食をとっているのはここくらいかもしれない
先輩たちの向かいの長椅子に腰かけて2人が弁当を広げだすと、咀嚼し終えた桜庭が五月に話しかけた
「なんか今日お前すごくなかった?いつも10%くらいダルそうなのが鼻につくのに、今日やる気だったじゃん。女子がいるから?」
すかさず木田が顔を上げて
「ですよね?」
と同意する
「あいつなんだ?って話してたよね。見学してた女子の中に気になる子でもいたのかと」
筑紫も笑って頷いた
五月と一緒に練習していた木田だけでなく離れた場所で練習していた3年生にまでそう思われたのだから、木田が感じた違和感は確実だ
五月は返答に困りながら顔を人差し指で掻くと、自分が持ってきた弁当に視線を落とした
「俺そんなに浮かれてた.......?今日お弁当なのが嬉しいだけだけど」
「「「え!?」」」
3人は生活感のある淡い緑色の弁当箱を覗き込み、「お~」だの「わ~」だの歓声を上げる
というのも彼らは、五月が学校にコンビニ弁当以外の弁当を持ってきたところを、言葉通り今の今まで一度も見たことがなかったのだ