2570 ー男子高校生とOLー



ムッとした私に、五月は優しくボールをパスする


「攻守交代です」


「よし!」



もちろんこの後、私は秒殺でボールを取られることになるのだが


久しぶりのバスケに夢中になっている自分がいた




そうそう


こんな感じ



瞬時に相手の出方を読み取り、ボールを上手く操れたときの快感を思い出す


手加減してもらっても五月には全く歯が立たないけど


やっぱ面白いな






なんで


バスケ辞めちゃったんだっけ




その時

私の体をおかしな感覚が包み込んだ




あれ


何だか、ふらっとする





何だろうこの感じ




身体は動くのに

その動きに体の芯が追いつかないような



意思と身体が伴わないような



おかしいな




「早苗さん?」




五月くんの声が遠い


頭の中でなにかがフラッシュバックした




燃えている


とてつもない光に包まれて

目の前がオレンジに燃えている




“こんななっちゃうんだ”


そう思った



________何が?






『早苗ちゃん吹奏楽部入ろう』


仁香の声が聞こえる




『あんたバスケはもう辞めな』


なつかしい、お母さんの声もする





「早苗さん!!」


「________え?」



わずか一瞬の出来事


倒れそうになった私の体を、五月が受け止めてくれた
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