きみにもう一度とどけたい、この声を


父親はもう出かけるところだった。

新聞をたたんでラックに差し込むとカップに残ったコーヒーをぐいと飲み干した。


「パパ、参考書買いたいからお金ちょうだい」
「お? ああ、幾らだ?」
「五千円ちょっと」
「じゃあこれで」
「ありがと。いってらっしゃい、パパ」
「ん」


……参考書買う予定なんかないけど。

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