私の好みはクズなんだってば。
好みのタイプはゲス野郎…っておかしい? by 凛
「あーーーー、彼氏欲しいな、誰か紹介してくれー」

「昼休みの講義室でよく恥ずかしげもなく大声でそんなこと言うわ」

「いやだってもう10月よ10月、あと2ヶ月で彼氏作らなクリスマス間に合わんしー。クリぼっちは嫌やもんー」

「もういいやん、今年は諦めたら?
そんな2ヶ月で大急ぎで彼氏作ってもクリスマス終わったらさっぱり綺麗にお別れパターン」

「いやもうそれでもいいからさぁ、クリスマスだけは1人で過ごしたくないなーって」

「なにそれ、じゃあもう女子会したらいいやん。しよ。」

「クリスマス女子会してるヤツらほんまに目も当てられんくない?…まぁ彼氏ができんかったらそうするしかないか。考えといて」

「はいはい、そんなん言うけどどうせあんたのことだしそのうちクソ男に引っかかってその女子会ドタキャンよ」

「しゃーないよー。好きやもん、クズ」

「はい出た、凛のクズ大好き発言」

スタバの新作ドリンク片手に呆れた顔で私を見てくるのは、高校の頃からの大親友で同じ大学に通う唐橋実咲。ちなみにこいつも私と一緒で今は独り身。

そう、実咲の発言にもあるように、私笠原凛はクズ男子にひっかかる星の下に生まれてきている。前の彼氏は私を付き合って1ヶ月で「お前飽きた」とあっさり振り、その前の彼氏は「お前とは住んでる世界が違うわ」などとよく分からない理由で振った挙句私のことを周りにネガキャン。

とりあえずみんなに伝えたいことがある。この2人との破局に関して私は絶対に何も変なことはしていないはずだ。

「まぁ実際凛は何もしてないと思う、あれは相手が悪すぎたけどさぁ。」

「相手が悪いといえど、なんか憎めないというか、まだみんな大好きなんだよなぁ〜…」

「それよ。ドMか。笑うわ」

「かもしんない、なんでだろ。二人ともイケメンだったからかなぁ〜」

「は?イケメン?ないないない地味すぎるって、ほらあそこの寒川くん見て?あーいうのをイケメンっていうんやって」

寒川慧、陸上部の王子様。うちの学部では柔らかい物腰とその綺麗な顔面で女子から大人気で、実咲もファンの1人である。

「ええー寒川?いやないわー、顔は綺麗かなーと思うけどイケメンとは思わんかな、付き合いたいとも全く思わん」

「はぁ?理解に苦しむ…」

そんな話をしながら、遠くの机に座り友人と談笑している寒川に目をやる。うわっ横の須藤くんと大谷くんやっぱかっこいいな。

「はぁぁ!?そっち!?いやあんなんどこにでもいる顔やって!目腐ってる」

「いやそれ私だけじゃなくて二人にも失礼だし!!」

ギャーギャー騒いでいると、突然頭に軽い衝撃が走る。

「いてっ、ってなんだ里崎か。」

「…お前、こんなイケメンのオレが絡んであげてるんやからもっとテンション上げろや」

今イケメンを自称したこの男は里崎晃。同回生男子の中では1番仲がいいけど、彼女はアクセサリーとか言っちゃうタイプのドクズ。ん?クズなら射程内だろって?…まぁ仲良すぎるとそういう気も起こらないもんです。そういうもんなんです。

「ん、いや里崎恋愛対象外だし全然ドキドキもせんからテンション上がらん、てか別にイケメンだとも思ってませーん」

「あっ里崎こいつ嘘ついてる、こないだ帰り道で『里崎の顔はタイプなんだよなぁ〜』って言ってましたぁー」

「言ってないしそんなこと!!」

「ふーん、オレの顔タイプ?じゃあ今晩二人で飲みに行こうや凛ちゃん…その後うち泊まりにおいで」

腰に手を回され、低いかすれ声が耳元に響く。はいこういうことするから対象外なんですね。色気がすぎるんじゃい。

「やばいやばい今貞操の危機感じた、こっち来んな10メートル離れろ」

「ひど(笑)けどまぁ冗談はさておき今日の夜暇か?何人か集めて飲みに行こうと思ってたんやけど、お前らもどうよ」

「えっどこ行くの?moonwalk?」

「まだ決めてへんけど。moonwalk行きたいんやったらそれでもいい」

「わっしゃーい!じゃあ行く!実咲も行こ?」

「凛の飲み過ぎ監視役としてついて行く、どうせ部活終わりやんな?」

「そうする予定。じゃあ二人共部活終わったら体育館来てくれ」

じゃあまた後でな、と手をヒラヒラさせながら教室を出ていく里崎を見送った後、残り30分の昼休みは机で突っ伏して過ごすことにした。今日の夜は長そうだ。
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