夏が残したテラス……
「いや、お前を信用していない訳じゃないんだ。ただ、お前の家は普通じゃないだろ? かなちゃん、辛い思いするんじゃないかと思ってな……」

 俺は、立ち上がって勇太が寄り掛かっている壁の横に並んだ。


「その為に、今、必死で認めさせてる。奏海は、大丈夫。きっと、皆に愛されるよ」

 だって、梨夏さんの娘なのだから……


「そうか…… 安心した。でも、お前、周りばかり固めてないで、ちゃんとかなちゃんに気持ち伝えろよ。これで、振られたら目も当てられん……」

 勇太は、眉間に皺を寄せ頭を抱えた。


「分かってるよ」

 分かってる。
 でも、マジで怖かった。
 自惚れかもしれないが、嫌われてるとは思ってない。

 でも、奏海の気持が俺に無かったら…… 
 俺の気持をぶつけてしまったら、もう、元には戻れないかもしれない。

 そしたら、俺は何の為に生きていけばいいのだろう……

 奏海の笑い声が戻るまでなんて、本当は自分への言い訳なのかもしれない……


「ほんと、お前変わったよな。昔の、ダメ人間の影もない。まさか、ここまで変わるとはな…… 愛の力は凄い」


「何言ってんだか?」

 俺は、小さなため息を吐く。


 でも、この俺に、本気で心配して、大事な事をはっきり言ってくれる友人がいる事を嬉しく思った。

 しかも、あの勇太が……


「勇太。ありがとう」

 そんな言葉がぽろりと漏れた。


「ばか! お前じゃない。俺は、かなちゃんの事を心配しいてるだけだ」


 俺と勇太は、お互いふっと笑った。
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