夏が残したテラス……
「勇太かよ。何の事だ?」

「今更、しらばっくれるな。かなちゃんの事だよ。影で虫ばっかり追い払ってないで、ちゃんと捕まえとけよ。本気で狙ってんのは、お前だけじゃないかもしれないぞ」

 俺は、片付けの手を止め、勇太を見た。


「お前もか?」

 勇太に向かって言った。


「バカか? そりゃ、大切な子だよ。でも、妹みないなもんかな…… 」

 勇太にその言葉に、ほっと溜め息を漏らしてしまった。


「おい、どんだけなんだよ……」

 勇太は、呆れたように言ったが、顔は面白いものでも見たようにニヤけている。


「うるせえぇ」

 俺は自分でも、顔が熱くなったのがわり、勇太に背を向け片付けの手を早めた。


「なあ、海里。かなちゃんの事、泣かせたりしないよな?」


「はぁ?」

 俺は、睨むように勇太を見た。

 勇太は、不安そうに俺を見ていた。
 その顔に、俺は勇太が言おうとする事を理解した。
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