夏が残したテラス……
咄嗟に伸ばした片手だけが、なんとか手すりに掴まっている。


 誰か助けて―

 誰も居るはずがない……

 思いっきり手に力を入れて這い上がろうとしが、足を掛ける事が出来ない。
 その上、風が強くて体を支えきれない。


 手の力が段々と無くなり、感覚も分からなくなってきた。

 それでも、目に浮かぶのは海里さんの姿だった。

 嫌だ、死にたくない!
 まだ、海里さんに謝ってない!
 まだ、まだ、海里さんに、何も言ってない……


 もう一度、手に力を入れるが、這い上がる事が出来ない。
 
 もう、だめだ……

 その時、私の手を誰かがガシッと掴んだ。

 なんとか顔を上げると……


「しっかりしろ!」

 私の一番聞きたかった声、一番見たかった顔があった。
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