夏が残したテラス……
そっと、窓を開けてのぞくと。パパの言ってた北側の手すりが音を立てている。

 このままだと手すりが外れ、大切なテラスを嵐が持って行ってしまうように思えた。

 私は、取りあえず止めておかなければと、倉庫から針金を手にテラスへと出た。思たより雨が激しくて、手すりまで行くのもやっとだ。

 ガタガタと音を立てて緩んでいる手すりに、針金を巻き付けた。もう一周と思い針金を引っ張ると、針金の先がブレスレットに引っかかった。

「あっ!」 

 ブレスレットのチェーンが外れ、手すりの外とへと落ちてしまった。

 慌てて覗くと、かろうじて木の幹にチェーンがひっかかり揺れている。手を伸ばせば届きそうだ。

 大切な物を嵐に取られるのはもう嫌だ。

 思いっきり手すりから手を伸ばした。


 もう少しでブレスレットに手が届くと思った時、手すりが鈍い音を立た。
 緩んでいた部分の針金が締まっておらず、手すりが外れ下へと崩れた。

「キャ―!」

 体が手すりの外に投げ出された。
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