願わくは、雨にくちづけ

 伊鈴を狙うすべてのものから隠すように、立花は腕の中に彼女を閉じ込め、唇で封じ、瞳で縛り付け、寵愛する。

 こんなにもかわいい彼女が、他の男から恋心を抱かれないはずがないのだ。
 感情豊かで、素直で、健康的な笑顔が魅力的で、夜は淫らになってくれる。
 そんな伊鈴の魅力は、自分だけが知っていればいい。

 他の男に、彼女を染め上げられてたまるものか。


「っ、はぁ……」

 絡めていた舌を見せたまま、とろけきった顔をする伊鈴を見つめ、再び唇を重ねる。

 こうしてキスをしたり、欲望を見せつけて愛し合う時間があることで、今は自分のものでいてくれると確認できる。
 しかし、目に見えないものを信じあい、心を紡いでいくことは、勇気が要るものだ。
 伊鈴は、どう思っているのだろう。

 こうして、半年ほど肩透かしを食らっている現状に、持て余す自分の想いが行き場を失いかけている。
 いつまで愛しい恋人でいてくれるのかと思うと、1日も早く籍を入れ、永遠の愛を誓ってほしいと願いが先を行く。

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