願わくは、雨にくちづけ

 それに、立花とこの前あんなふうに過ごしたきり顔も見れていないのが、どうにも気がかりだった。

 しかも、今週に限って予定が合わず、週末まで会えそうにない。
 彼も多忙だし、伊鈴も残業で帰りが遅くなる日が増え、学生時代の友人との食事の予定もある。

(きっといい気分ではなかったよね……)

 新井からの告白を断らずにいるのも、決してよく思っていなかったはずだ。
 帰りがけに、断ると話しておいたものの、実際のところそれを決行するタイミングが掴めぬまま、多忙に日々が追われていくばかり。


「十河さん、聞いてますか?」
「っ!! な、なに?」

 仕事をしながら考え事をするものではない。
 いつの間にか、新井が伊鈴の顔を覗き込んでいた。

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