願わくは、雨にくちづけ

「なにって、話の途中だったじゃないですか」
「あ、そうか。ごめん」

 つい立花のことを考えてしまうのは、たった数日会えていないだけなのに寂しいからだ。
 メッセージを送りあってはいるものの、電話で話すタイミングが合わなくて、声も聞けていない。

 
「どうして、俺と飲みに行ってくれないんですか?」
「……わかった、ランチだったら行くよ。夜はもう予定が入ってるからパス」
「了解です。じゃあ、今日あたり行きましょう」

 新井は、伊鈴からいい返事をもらえただけで、すごく嬉しそうに笑って、再び業務に戻った。

 こんなふうにまっすぐに、手放しで恋ができたら、きっと立花からのプロポーズにも返事をしていることだろう。
 ただ愛しくて、恋しくて、彼なしでは生きていけないほど焦がれていると愛を伝えて……。
 きっと、それで彼も受け止めてくれるはずなのだ。

< 39 / 135 >

この作品をシェア

pagetop