闇夜に消えて
闇夜に消えて

月と星



私は全てを捨てた。


親も、家も、何も無い。


必要最低限のものだけをバッグに詰め込んで


誰も私を知らない街へ繰り出した。



5年前、両親は離婚した。


再婚の邪魔になる私を押し付け合い、結局母について行くことになった。


母が私を引き取ることを決めたのは、慰謝料が貰えるから。


ただそれだけの理由。


私への愛なんてこれっぽっちもない。


『私は忙しいの。
金だけあげるからどっかいって』


それが母の口癖だった。


母には、お金持ちの恋人と、慰謝料だけあればいいみたい。


中学卒業と同時に、貯めたお金を持って家を出た。


きっと、私がいなくなっても母は何も思わない。


むしろ喜ぶかもしれない。
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