虹色の言葉
1章
本が好きだった。
無愛想で口下手な私が、唯一素直になれる場所。
本を読んでいる時だけは、どんな時も笑顔になれた。
もともと人と接するのが苦手な私は、小学校に入り、更に本の世界にのめり込んだ。
気が付けば、中学2年で作家デビュー。
そこまでは良かった。
デビューから1年。新作の原稿を届けた帰り道。
(どんな本になるかな…)
そんな事を思ったのも束の間。

キキーッ、ッドン。

(何があったの…?)
信号を無視した車に跳ねられた。私が状況を理解する間も無く医師が言った。
診察結果は、失語症。歩道の段差に頭を強く打ち付けたのが原因らしい。
言語を司る脳を損傷。言葉を理解することは出来るが、それ以外の読み書きや、話す事が困難になると言う。簡単な文は可能だが、小説を書くことは出来なくなった。
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