エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
「ひとつだけ、聞いてもいいですか?」
奪われるのは構わない。でも、確認したいことがある。
「なんでしょう」
「百合さんのことです。……大切な、婚約者さん……なんですよね?」
一誠さんは一瞬私から目を逸らし、固い表情になった。けれど、すぐにまた甘い眼差しで、私を見つめる。
「“元婚約者”です。今は他人。……ほかに質問は?」
拍子抜けするほどあっさり、他人と言い切った彼。
百合さん本人の言い分とは全く違うけれど、信じていいのだろうか。
「一誠さんは彼女との結婚で、この会社の社長になるんじゃないんですか?」
「……そのことももちろん白紙です。が、出世なら、実力でしますよ。まだ、質問はありますか?」
正直、質問したいことは、まだたくさんある。
でも……どんなことを言われたって、私自身の心が向いている先は、もう決まっているのだ。
唯人くんと一緒に、理想のデートをしていたって、心の中にはいつもあなたがいた。忘れることなんて、できなかった。
……私はやっぱり、一誠さんが好きなんです。今は何よりあなたに触れたい。触れて欲しい。心の中で告白しながら、切なげに彼を見つめ返した。