エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~

「……巴。その涙は、佐伯さんへの罪悪感?」

「え?」

「別に、罪悪感でなくても構わないのですが、ただ……自分の彼氏がほかの女性と寝ていたことを知って、悲しんでいるのではないのですね?」

図星を突かれて、ぐ、と言葉に詰まる。

なんで……見透かされてるんだろう。彼の言う通り、私、唯人くんに裏切られたことより、露子との友情が揺らぐことにショックを感じている。もしも露子が唯人くんに本気なら、むしろ彼女の恋を応援したいとさえ思う。

こんなの……恋人として、おかしい、よね。

一誠さんは、私の沈黙を肯定と受け取ったらしい。

身を屈めて私の耳元に唇を寄せると、吐息交じりの妖艶な声で宣言した。

「それでは遠慮なく、奪い返すとしましょう」

ドキン、と大きく胸が高鳴り、おずおず見つめた先の彼と至近距離で視線が絡むと、金縛りにあったように動けなくなった。

前にも感じた、底なし沼に足を取られるような感覚がする。

でも、私、心のどこかできっと、それを望んでいた――。



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