エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
「パパがなんですか。今、お腹にいる子どものママはきみです。社長の言いなりで、好きでもない僕と一緒になって、冷え切った家庭環境の中で自分の子を育てたいんですか?」
「そんなこと……! あるはず、ないじゃない……」
かぶせ気味に反論してきた彼女に、それが本心なのだと安心する。
今まではまるで自分の意思で僕に執着していたように見せていたけれど、きっとそれは自己暗示の意味もあって、実際は父親の意に添うように行動していただけだったのだ。
「だったら、戻ろう。……その子の父親の元へ。彼の方だって、きみから一方的に別れを告げられて、納得しているとは思えない」
百合はきゅっと唇を噛んで黙り込み、長い睫毛を伏せてしばらく悩んだ後で言った。
「一誠が……一緒に、来てくれるなら」
おそらく、心細いのだろう。すがるように見つめられ、僕はすこし悩んだ。
社長にあらぬことを吹き込まれ、ショックを受けているであろう巴のフォローもしたいが、こちらも急ぐ案件だ。お腹の子も、現在進行形で育っている。
中途半端な状態では、巴のことを完全に安心させてやれるとも思えないし……。