エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
「なぜ、そんなことを……きみが本当の父親と結婚すればいいだけじゃないですか」
「ダメよ。パパが認めないし、私もあの人じゃいやなの。だって、子どもには何不自由ない生活をさせてあげたいじゃない? 一誠が私と結婚して社長になれば、それが叶う」
何不自由ない生活……? 僕はその言葉にひどく違和感を覚え、思わず言い返す。
「愛し合ってない父親と母親の姿を見せて、なんになります。大切なのは、経済的な自由より愛情だとは思わないんですか?」
僕の強い口調に、百合は少したじろいだ。黙って唇を噛み、しばらくすると、絞り出すような声で言った。
「思うわよ……。でも、パパが……彼と別れさせたり、あなたと結婚させようとするのも、パパの愛情……でしょ?」
自信なさげに問いかける彼女の瞳から、はらりと涙が落ちてアスファルトを濡らした。
僕はその時初めて、このワガママなお嬢様もまた、苦しんでいたのだと知る。
そして同時に湧き上がるのは、愛する娘をこんな風に泣かせる社長への怒りだった。