エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~

「きれい……」

夜のチャペルは、天井のシャンデリアから降り注ぐ光と、バージンロードの両脇に並んだ、小さなキャンドルが浮かび上がらせる光で、あたたかなオレンジ色に染まっていた。

大理石の床をゆっくりと歩き、大きな十字架が壁に掲げられた祭壇の前までくると、一誠さんがそっとつないでいた手を離して、正面から私を見つめた。

「……今まで、巴のこと、たくさん悩ませてしまったこと、謝ります。僕が、シミュレーションなんて中途半端なことを提案したせいもあって……不安にもさせました」

一誠さんが、ひとつひとつ、後悔を吐き出すように語る。私はじっと彼を見つめ、ひとつも聞き漏らさぬよう、耳を傾ける。

「でも、初めて巴を抱いたあの夜から、僕は間違いなくきみに惹かれていて……百合のことでささくれ立っていた気持ちも、きみのおかげで癒された。百合から電話のあった朝に、嘘でも好きだと言ってくれたこと……それにも、心が救われて。僕の痛みに寄り添ってくれるきみのことを、本気で好きになりました」

「一誠さん……」

本気だと口に出して言ってくれたのは、それよりもずいぶん後のことだったけれど、彼の気持ちはそんなに前から、私を求めてくれていたんだ――。

初めて語られる彼の心境に、否応なく胸が熱くなった。


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