エリート部長の甘すぎる独占欲~偽装恋愛のはずでしたが!?~
「……しかし、シミュレーションをしていく過程できみも気づいたかもしれませんが、僕は人より嫉妬深い。今さら普通の恋人になったところで、満足できる気がしないんです」
自嘲気味に言った彼は、スーツの胸ポケットを探って、何か小さなものを取り出した。
それは、大きな粒のダイヤがひとつ、まばゆい輝きを放っている、プラチナ色のリング。
すごい……豪華で、きれいな指輪。それって、まさか。
「昨日、急いで手に入れました。もちろん、きちんときみに似合いそうなものを吟味して選んだつもりです。……これで、きみのこと、一生束縛させてもらいたいんだけど、いいかな?」
私の左手をそっと取り、薬指に嵌める寸前で、そんなことを問いかけてくる一誠さん。
……断る理由なんか、あるわけがない。ずっとずっと、あなたに束縛される人生を、私自身が選びたい。
「うれしいです……一誠さん」
そう言って泣き笑いみたいな顔を向けて見せれば、微笑んだ彼がゆっくりとリングを指に通してくれる。
そして一番奥にぴったり収まった瞬間、今までで一番の幸福な気持ちが心に溢れるのと同時に、とうとう私の目から大粒の涙がこぼれた。