順番






「くそっ」


俺はそう言いながら彼女のブラウスを脱がす
身体中に広がる真っ赤な痕



あれから10年



あれから俺は彼女にしか触れていない


抱かれ続けて抱き方を忘れてしまったかも知れない
一度他の女を抱こうとしたが無理だった


反応しない
欲情しないのだ



10年の歳月が経っても抱かれている俺が彼女の身体に痕を付けることが出来ない


脱がす度に押し寄せる嫉妬
毎日抱かれていると言っていた
それは、10年経っても変わらないのだろう
彼女を愛している旦那の華が無くなることはなかったからだ

きっと、昨日も彼女を抱いた旦那
旦那に抱かれた彼女に俺が抱かれている

10年経っても彼女の身体も魅力も全く変わりない
更にその美しさを増した



「もうすぐあの人が死ぬから、次は貴方が私を抱いてね」


俺は更に昂りを感じていつもより早く果てた


俺が彼女の身体に痕を付ける事ができるのだ



漸く、選ばれた
俺の番が来たのだ


待ちきれない
もうすぐって、いつだ?
明日か?
一年後か?



就業後、彼女の跡をつけて家を突き止めた



「西野、悪い至急この書類作って欲しい
明日の朝の会議に必要なんだ」

「あ、わかりました」



わざと、終業時間前に仕事を頼んだ
あの資料なら余裕で二時間は残業だ


俺は得意先に行ってくると言って会社を出た




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