さようなら、初めまして。
「百子さん…。あぁ、取り敢えず良かった。百子さん、心配しました。声…風邪?大丈夫ですか?」

手を取り合った。

「んん、そう、風邪、ひいてしまって。ん゙ん゙。歳をとってるでしょ?だから、ちょっと、ね。でも、もう大丈夫なのよ。ん゙ん゙、熱ももう無いし、ご飯も食べられてるのよ。声がまだ出にくいだけなの。
暫く、急に連絡もせず居なかったから、心配かけちゃったわね」

あ、もしかして入院してたのかな…。

「ごめんなさい、私も、早く訪ねなかったから…」

「いいのよ。貴女にお守りを頼んでいる訳ではないもの。来てもらっても留守でしたよ、ごめんなさいね」

「…ううん」

…ごめんなさい。全然気がつかなくて。

「…タイミングが悪かったわね。ごめんなさいね、あの日は、私、何も思わず呟いてしまって。変だと思ったわよね、わざわざ、逢生ちゃんが、…辛くなる事を言ったりして。
本当に、そう感じたから、口にしてしまってたの。ごめんなさいね。
逢生ちゃんが楽しくしていた様子は見て来ていたから。ごめんね、思い出させてしまって」

「いいんです。私も、悠人の事は、…いつまでも……思ってても駄目だって。上手く思わなくちゃと思ってるんです」

それがまだ未練たらしく完璧には出来てないって事だ。

「……あの人は…、親戚とか、そんな人でもないのかしらね…」

あ、そういえば、百子さんには説明が途中のままだった。

「…聞いた訳ではないですが、そんな偶然はないと思いますよ。あのね、百子さん、靴を履かずに戻った日があったでしょ?あの時、履いてた靴下は、あの男性が貸してくれた物なんです」

「そう。そうだったの。気の利いた事をする優しい人ね」

あまり長くは体に良くないだろう。

「はい。ジンさんて、名前しか知らないけど、困ってるところを親切にしてくれた、そんな人なんです。
百子さん、お買い物とか、用があったらしますよ?」

「有り難う。今のところ不自由はないわ」

「声、かけますから、遠慮しないでくださいね」

「はいはい、有り難うね」

「では、失礼しますね、お大事に」

「はいはい。逢生ちゃん、ごめんなさいね、私」

「大丈夫です、もう気にしないで?」

はぁ、取り敢えずは良かった。でも、これ以上百子さんの気を病ませてはいけない。
百子さんも思うほど感じたモノって、ジンさんは何かあるのかな…。本当に悠人と親戚とか…?
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