さようなら、初めまして。
偶然て、本当にあるものなんだと思った。今日は別に捜していた訳じゃなかった。

「アイ、ちゃん?」

私を呼ぶ声に振り向いた。声を掛けてきたのはジンさんだった。

「あ、ジンさん…」

ジンさんだ。作業着姿ではなかった。

「あー、やっぱりそうだった。一人?」

「はい」

あ、フフ、おかしな物ね。同じように声を掛けられても全然違うものだ。恐くはないし、嫌でもない。まして、逃げなくちゃなんて思わない。

「…ん?どうした?俺、なんか可笑しい?
え?思い出し笑い?」

あ、私、…笑ってたんだ。…フフ。

「そうですね。あ、ジンさんが変な訳じゃないです。
もう、今日はお仕事は終わりですか?」

「あ、ああ。終わり」

「そうですか」

「ご飯は?あ、お茶は?」

「え?」

いきなり…なんでしょう…?

「あー、んー、珈琲でも飲まないかなと思って。駄目ならいいんだ、駄目なら」

「急にナンパですか?フフフ」

「…あ゙、違う。けど違わないか…。これではアイツと同じか…」

「ぇえ?フフ。違います、全然違います。こんなに下手に、強引ではないのは、あの男の人とは違います。
この状況、助けてー、て、言わなくちゃとは思わないですから」

「ハハ。なら、時間ある?」

「はい。ありますよ?」

「じゃあ、ちょっと、珈琲しよう。いい?」

「はい、ちょっと。…フフ」

「時間がないんだ…」

え?え??誘っておいて?ちょっとって、本当にちょっとって事だったんだ。

「また直ぐお仕事ですか?この後、約束でも?」

あるんだろうか。だったら、時間潰し程度にって事ね。

「あ?…あー…違う。ただ時間がないだけ」

ん。よく解らないけど、今、少し時間が空いてるからって事かな。じゃあ、急がなきゃね。

「では、少しだけ、行きましょうか」

なら、大丈夫なのよね。

「少しだけか…言い方がおかしかったか…」

「え?」

「え?あ、いや…うん…行こう」

ん?なんだかよく解らない。だけど、私が気にする事でもないのかな。無理な時間になったら言ってくれるだろう。


店に入ると人が多くてどうやら席は難しそうだった。取り敢えずテイクアウトした。…うちの方に向かって歩いた。送りながらって事だろうか。
これで時間は潰れてしまうのかも知れない。

通りすがりに公園に寄った。
ここは、部屋から近い、悠人と来た…話した場所…。

「…ここ、座る?」

敷地に入って直ぐの場所、ベンチ。ここにも悠人と座った。

「はい」

日は落ちていた。
夕暮れの公園はそれだけで何だか寂しい。
誰も居なかった。

珈琲を飲み切る時間くらい居るって事だ。
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