死にたがりティーンエイジを忘れない


やがて、上田と尾崎が合流した。

尾崎はやっぱり普段よりも、女としての自分を強調しているように見えた。

上田はけっこう冷静で、むしろ冷淡だった。


夕食のファミレスで、上田とわたしだけになるタイミングがあった。

上田はこっそり言った。


「誰かと一緒に買い物に出たことって、中学時代に菅野とちょっと遊んだことがあるくらいなんだけど」


久しぶりに菅野という名前を聞いた。

小柄な野球部の、ひどく無邪気なやつ。

男子校に行った。


ちょっと言葉を切った上田は、ため息交じりに続きを言った。


「さすがにやっぱり、女子のペースに合わせるのは疲れるね。悪口のつもりじゃないけど、ずっと誰かと一緒に行動するっていうのは、ぼくは慣れてないから、けっこうきつい」

「尾崎はきみといたいんじゃない?」


上田はビックリしたように視線を上げた。


「蒼さんにそんなこと言われるなんて思わなかった。そういうところ、見てるんだ? いや、見てるよね。文芸部誌のホームステイのラブストーリーも、すごいリアルだったし。蒼さんの実話なんじゃないかって思うくらい」

「それは違う。わたし自身は、恋には興味ない。まわりのことは、ちょっとは見えるけど」

「見える? 本当に? 本当にちゃんと見てる?」


< 191 / 340 >

この作品をシェア

pagetop