雨のち晴れ

眩しい人


6月の中頃。

あいつは私の前に現れた。



「今日は転校生を紹介します」

先生の言葉に教室中が騒がしくなる。

私はそんなことは気にせず窓際の隅の自分の席から外を見ていた。


ガラガラッ


扉の開く音とともにクラス中がさらに騒がしくなった。

何なのよ、転校生くらいで......


バンッ


すると突然、黒板を叩く音が教室に響いた。

「俺は広瀬太陽!よろしくな!」

と、うるさい声が聞こえて来た。

なんでこんなにうるさい人が......

私は呆れながら黒板の方を見た。

するとそこには眩しい笑顔をみんなに向けている男子生徒がいた。

「っ......」

絶対、私あの人のこと苦手だ。

あの人の笑顔は私には眩しい。

それに見た目だってチャラい。

金髪にピアス。

不良なわけ?

まぁ、とにかく関わらないように......

と、私は窓の外に視線を戻そうとした時だった。

「広瀬は雨宮の隣の席だ」

先生はいつもと変わらない口調で言った。

え、嘘でしょ......

先生の言葉にフリーズしてしまった。

関わりたくなかったのに......

みんなが私に冷たい視線を向けてくる。

だからいやだったんだ。

男子は楽しそうにこちらに歩いてくると笑顔で私を見た。

そんな彼から目をそらす。

そう私が目をそらし、関わりたくないとアピールしたにもかかわらず

「よお!俺は広瀬......」

と、彼は私に話しかけようとしてきた。

私はそんな彼の言葉を遮り

「さっき聞いた」

と、無愛想に答えた。

普通だったら、こんな受け答えをする人なんて無視するはずなのに......

「そうだったな!それでお前の名前は?」

そう食い気味にたずねられた。

なんなのよ、こいつ.......

「なあ!」

しつこい

何も答えない私を転校生はじっと見つめてくる。

これは答えた方がいいのか......

「雨宮美琴......」

そう小さな声で言った私を転校生は不思議そうに見つめてくる。

何がそんなに不思議なわけ......

「美琴か!いい名前だな!よろしく!」

「う、うん」

「俺のことは太陽でいいいからな」

そう言って彼は眩しい笑顔を私に向けた。

やめて......

あなたの笑顔は私には眩しすぎる。

私は彼から顔を背けた。
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