シンデレラは騙されない


「先生も先生の弟に会いたくなっちゃった。
凛様は星矢君にとって大切なお兄ちゃんだもんね」

星矢君は大きく頷き、私の手を引いて自分の部屋を出た。

「先生もリビングに行く?」

私は静かに首を横に振る。

「先生は自分の部屋に帰ります。
星矢君、おやすみなさい。
いい夢見てね…」

私が自分の部屋へ戻ると、凛様がドアの前に座り込んでいた。
そして、頭を抱えて疲れた様子で私を見上げる。

「凛様、星矢君のお風呂は?」

こんな時でさえ、私は星矢君の事を口に出す。
いや、こんな時だからこそ、星矢君の事しか思いつかない。
凛様は咎めるように私を見た。

「麻里…
俺の話した事、覚えてる…?」

私は一気に涙が溢れ出る。
覚えてる…
忘れた事なんかないよ、一語一句全部覚えてる…
でも、今の私は何も言えなかった。
そんな自分が嫌でしょうがない。

「凛様…
お願いだから、星矢君の元へ行ってあげて。
星矢君、凛様とお風呂に入るって楽しみにしてたから」



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