シンデレラは騙されない
「麻里先生か?」
俺は大きく頷いた。
「父さんは麻里先生が、何でこの家に家庭教師として住込みで働いているか理由は知ってる?」
父さんは感慨深げに頷いた。
「その理由は母さんから聞いたよ。
弟の学費のために頑張ってるって」
「麻里先生は、生真面目であり得ないほど純粋な人なんだ。
俺が必死に口説いても全然振り向いてもくれない。
だって、彼女の中で一番嫌いで許せない男が、働かない男だって」
父さんは笑いながら、母さん達を見回した。
でも、さすがに、何か事情がある事に何となく気付いた感じだった。
「俺はこの先、俺の未来には絶対に麻里にいてほしいって思った。
絶対に手離したくないって。
彼女は俺とつき合う事にずっと消極的で、おこがましいとさえ思っていたみたいで。
だけど、俺はずっと口説き続けた。
もう、俺にとって、麻里は必要不可欠だったから」
何となく全てを察した父さんは、麻里がいない事にようやく気付いた。
「で、麻里先生は?
今日は居ないのか?」
すると、星矢が急に泣き出した。