シンデレラは騙されない


「おじいちゃま…
麻里先生、出て行っちゃったの…
僕に何も言わずに、いつの間にかいなくなっちゃったんだ…」

すると、ずっと黙っていた綾までもが泣き出した。
もう、何が何だか意味が分からない。
綾が泣く理由が全く分からない。
麻里を追い出した張本人のくせに。

「ちょっと待って、ちょっと待って。
ちゃんと説明してほしい。
麻里先生は、確か、三月までの契約だったよね?
何でいなくなったんだ?」

父さんはこういう時に本当に役に立つ。
きっと、こういう修羅場をたくさんくぐっているせいだと思う。
俺がこの家の長男であんなに好き放題できたのも、父さんという味方がいてくれたから。
でも、今回は自分の力で何とかする。
そうじゃなきゃ、麻里は絶対に納得なんかしない。

そして、この状況の沈黙を破ったのは、母さんだった。
静かにポツリポツリと話し出す。



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