私は強くない
こんな日に
「ごめん、慶都…俺…」

拓真が何か言ってる。

けど、私には聞こえない…。

…違う、これ以上聞きたくなかった。これ以上、自分がみじめになるのが。

「もう、いいよ。何も聞きたくない、帰って!」

それだけ言うのが、精一杯だった。




何時間経ったんだろう。

拓真は…、

「あ、帰ったんだ…」

自分で帰れと言った事を思い出した。静かな部屋の中に、時計の秒針の音だけが、響いていた。
時計の針は1時を指していた。

「仕事…あ、休みか」

口に出た言葉を聞いて、案外自分は強いのかもしれないと思ってしまった。
こんな事になっても、まだ仕事の心配が出来るのだから。



どうして、こんな事になったんだろう。
何がいけなかったんだろう。

私?
分からない。

今日は特別な日になるはずだったのに。
こんなはずじゃなかったのに、

…なかったのに。

誰に聞いたら答えが、返ってくるのか。
それも分からない。

けど、さっきまでの私は幸せの絶頂にいたはず。

そう、今の今までは…




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