私は強くない
♪♪♪

「まだ、寝てたい…」

そう口に出しながら、携帯の目覚まし音を消した。
何分かしただろうか、布団の中で意識がはっきりしてきた私は、やっと体を起こした。
いつもと同じように、仕事に行く準備をしてると、携帯の着信音が鳴った。

ディスプレイを見て、笑顔になる。

「もしもし、おはよう。どうしたの?こんな時間に


「おはよう。仕事前にごめんな。今夜時間あるかな?」

「大丈夫だよ。今日は早く帰れると思うから。

「じゃ、夜行くから。大事な話があるんだ。また連絡するわ」

「ん、分かった。また会社でね」

そう言った私に返事がないままに、電話が切れる。
電話の相手は、付き合って3年になる、奥菜拓真。同じ会社の後輩。

大事な話ってなんだろう?
仕事に行く準備をしながら、何の話なんだろうと考えていた。
そう言えば、もう付き合って3年になるんだな、私達。
この間も、もうそろそろ?みたいな話してたから、もしかしてそんな話?
そうなのかな。もうすぐ私の誕生日だし…。40になるまでに結婚したい、出来るなら子供も欲しいって、拓真に言ったし…。考えるって言ってくれたし。

朝から妄想が膨らんで、いろいろ考えていたら、遅刻しそうになった。


「おはよう、間に合った、はぁ」

時間ギリギリに入った私を見て、後輩の美波が突っ込んでくる。

「おはようございます。慶都さん、珍しいですね、いつも早いのに」

意味深な顔を見せながら話をしてくる。
「出かけに、ちょっとあってね、遅くなったのよ」

「出かけに、ねぇ?」

「さぁ、もう時間だから仕事しましょ」

何か話をされそうになったけど、始業時間になったので、つかまらずに済んだ。
私が働いてるのは、人事部。
いつの間にか、役職までついてしまった。働いてる年月が長いのもあるけど、仕事を認めてもらうって言うのは、やっぱり嬉しい。
仲のいい、周りの同期や後輩は、寿退社してほとんど残っていない。
唯一残ってるのが、さっき話かけてきた、後輩の美波31歳。彼女も付き合ってる彼氏と結婚が決まっていて来年には、ここを退職することが決まってるけど。
美波には拓真の事で、何度か相談に乗ってもらってるから、すぐ突っ込まれるんだけど。
ちゃんと話が、決まったら一番に報告しようと思ってる。


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