私は強くない
自分で話をしてしまったものの、私の部署異動と言う事で、考え込んでしまったみたい。

私としては、半年しか営業部でやってないし、このまま残りたいと言うのが本音。
ただ、会社として、夫婦が同じ部署と言うのは前例がないから、無理だろうと…

どうしたものか。

「俺が異動願い出そうか…」

ん?

「いや、圭輔さん、待って。あなた部長職なのよ?何考えてるの?そんなに簡単に営業部長が、異動とか出来る訳ないじゃない」

「それを言うなら、慶都だって課長じゃないか。無理だろ?」

「う、そうなんだけど…」

二人会議室で、唸っていた。

コンコン

「はい?」

圭輔さんが、ノックに反応した。
誰だろ?
ここにいるとは、ホワイトボードに書いてきたけど…

カチャ

「すまんな、邪魔して…」

「都築かよ…」

都築部長が、開いたドアから顔を覗かせた。

「どうしたんですか?都築部長」

「名取…お前なぁ、そのあからさまな態度やめろよ?俺で悪かったな」

「い、いや。今、お前が言ったことで頭捻ってたからさ…」

「あ、異動の件か?」

「はい。どうしたものかと…」

「まぁ、どっちにしろお前らが結婚したら、倉橋は異動だぞ?それは覚悟してるんだろうな?」

「そうだよな、こればっかりは…」

ここまできたら仕方ないのかな。

「都築部長、私人事部に行きます」

「お、そうか!」
「な、なにを!」

圭輔さんと都築部長の声が重なった。
都築部長は、ありがとうと手を握って会議室から出て行った。

「慶都、いいのか?」

「仕方ないじゃない。多分だけど、都築部長がこうやって話してくるからには、考えがあるからじゃないかな。私も元々人事部の人間よ。深くは人事に関しては言えないから、あえてお願いしに来たんじゃないのかな、って。それに、どっちにしたって、異動が出たら嫌だって言っても一緒じゃない?それなら人事部の方がいいわよ、古巣だし」

「そうか、それもそうだな。都築に任せるか…」

それから少し会議室で話をして、私達は営業部に戻った。


その頃、人事部では都築が、大阪支社の人間と話をしていた。
今回、人事部の木村が結婚退職するにあたり、大幅な人事異動が発令される事となっていた。
それは、圭輔も知らない事で、慶都が言っていた、何か考えがあるから自分に人事部に戻ってほしいと言われた事と関係していた。



都築部長と話をしてから、1ヶ月後。
美波が結婚退職し、人事異動が発表された。

私は言われていたように人事部に、と言うか、営業部と兼任で期限付きに。
そして、大阪支社から一人東京本社人事部に異動になった。


「え、嘘。蒼井帰ってくるの…」

私の同期、蒼井裕輔が…


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