私は強くない
私の一言に飛びついた、美波が

「あれぇ?私達じゃダメですか?」

「え、あ、…」

帰ってほしくない、そう思ったのを美波に感じ取られた事に恥ずかしくなって、下を向いていると、

「木村、茶化すなよ。怖いんだよ。倉橋は」

「えー?そうですか?違…、何よ!」

美波は、途中で金谷君に口を塞がれていた。

「もう!陽一なによ!」

「あんまり、慶都さんをいじめんなよ。困ってるだろ?」

「うー」

「ごめんね、美波。名取課長、私大丈夫ですから、美波達も帰っていいよ。心配しな…」

「強がるな、って言ったよな?」

心配しないでって言おうとしたら、名取課長に言われてしまった。

「そんな顔している、倉橋を一人になんか出来ないだろ?」

「でも、…」

「でも、じゃない」

「はい」

黙って話を聞いていた、金谷君が

「俺達は邪魔なんで帰りますね」

「お、おい!なんでそうなるんだ。違うだろっ」

「違わないでしょ?名取課長」

しかも、美波に突っ込まれてる。

名取課長って、結構天然かも。


「それはそうと、倉橋。なんで奥菜を部屋に入れたんだ?」

2人から、突っ込まれて話をすり替えた名取課長。

「え、あ、あの」

言っていいのか、迷った。

「言いづらい事か?」

「いえ、荷物を片付けたいって言われて…」

少し考えてから名取課長は、

「ほとぼりが冷めたら、また来るだろうな。奥菜の事だから」

「それはありえますね。拓真のそういうとこ」

「倉橋、今から片付けろ。奥菜の荷物。俺が持って行ってやるよ」

「いや、そんな事。名取課長にお願いなんて出来ないです」

「なんでだ?これ以上危険な目に合う必要もないだろ」

「申し訳ないですよ」

二人とも、行く、いらないの押し問答をしていると、

「私達が行ってきますよ。逆に慶都さんの荷物、持って帰ってきます」

美波が金谷君と行くと言い出した。

「私達だったら遠慮はいりませんよね?私達の同期のやらかした事、責任取ってきます、ね?陽一」

「あ、ああ。俺も拓真に話してきますよ」


私がボー然としていると、3人で話が進んでしまっていた。

美波達が行っている間、名取課長がいてくれる事になった。

「じゃ、名取課長お願いしますね?いろいろと」

2人、意味深な笑みを浮かべて、出かけて行った。


2人部屋に残されて戸惑う。

「あ、あの。名取課長…」

「う?うん?あぁ」

どうしよう。
何話したらいいのかな。

「倉橋…」

「え?」

しようと顔を上げた瞬間、名取課長が私を強く抱きしめてくれた。

「倉橋、怖かっただろ。ごめんな、あのまま帰すんじゃなかったな」

「あ、名取課長…」

また私は泣いていた。

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