私は強くない
倉橋の家でゆっくりしていると、常務から電話があった。

「休みの日に悪いね」

来た。都築が言ってた事だな、と思った。

「今回の人事に関してなんだが…営業部の係長に関して、名取君の意見も聞こうと思ってね…」

都築の言っていたように、俺は奥菜を推してると伝えた。
都築が倉橋を推してきたが、どう思う?と言われた。
言ってた通りに、俺は自分自身の意見を述べた。
常務からは、結果いいだろう、と了解をもらえた。

しかし、ここで問題が。

プレゼンになるのは分かっていた事だが、またあの専務の娘婿が関わってくる事になるなんて…。

今の倉橋では、佐野は目じゃないが、専務が絡むだけにやっかいだ。
手伝う事も出来ないから、歯がゆい気持ちになる。

倉橋はそんな俺に

「誰に鍛えてもらったんですか?」

と、自信に満ち溢れた顔を見せた。

その顔を見て、倉橋は大丈夫だと思った。

このプレゼンは倉橋の勝ちだな、と。



…そして、俺は甘く見てた。

倉橋が、この件に関わっている間は、会社内外で、あまり一緒にいる所を見られてはまずいという事。
俺からの助言が、あると思われるのは彼女にとってマイナスにしかならないから。

しまった。
ちゃんと気持ち伝えておけばよかった。この一件が終わるまで、仕事以外であまり話かけられない。

隠れてマンションに行く訳にもいかない、これは耐えるしかないな、と俺は思った。
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