私は強くない
妊娠?

誰が妊娠したって?

「慶都、…ごめん」
続けて何かを言おうとする拓真に

「帰って!」

と、突き放すしか、私は出来なかった。

どうしてこんな事になったんだろう。

今朝は拓真からの電話で、幸せの絶頂にいられたのに。
お昼も会社で話をしてたのに、
結婚したい人がいるから、報告しますよって、美波や名取課長に言ってたじゃない。それが私じゃなかったって事。

……なんなの。

私の存在って何?
子供って何?

子供が出来たって、私だって子供欲しかったわよ。拓真との子供が。

「女としての幸せを望んじゃいけないの?何が強いから大丈夫よ!勝手に決めないで!うわぁ〜」

何かが、私の中で弾けた。
線が切れたように、私は声を出して泣いていた。
強いから大丈夫、1人で生きていける。そう言われて傷つかない訳がない。
拓真がいたからこそ、強く頑張ってこれたんじゃない。
私の3年は何だったの。

♪♪♪♪

静まり返った部屋に、携帯の着信音が鳴り響く。ディスプレイには、『母』の表示が。
出られない、こんな状態で電話に出たら心配するのが分かってるから。
音が切れるまで、私は泣きながらその表示を見ていた。

親にも紹介したのに、もうすぐ結婚ね、って話もしてたのに。
これからどうしたらいいんだろう。
私、会社で拓真の顔をらまともに見れるんだろうか……。

色んな事を考えている内に、いつの間にか眠ってしまっていた。


「痛っ…」

気がつけば、お昼過ぎになっていた。私はソファの上で眠ってしまったようだった。
身体中が痛かった。
重い体を引きずって、洗面台の鏡を見た。

「何、この顔…」

泣き腫らしたせいで、目が腫れてる。
今日が土曜日でよかった、こんな顔じゃ、会社に行けない。

「冷そ…」

何も食べる気がしなくて、ただ目を冷やし続けていた。


結局、日曜日もどこにも出かけず、電話のあった母に連絡だけして、出かけていて電話に出られなかったと嘘をついた。
別れたなんて、言えなかった。
心配をかけたくなかった。

娘には幸せな結婚をして欲しいと願ってる母に、言える訳もなかった。
父も同じだけど。

私の家族は、両親と兄、姉の5人家族。
普通の家庭だと、言いたいがちょっと複雑な家庭環境にあった。
母は、私が6歳の時に今の父と再婚した。兄と姉は父の連れ子だったんで、血は繋がってないけど、血のつながりなんて関係ないって言うぐらい、妹として可愛がってくれた。
兄と姉は結婚して、子供もいるから母としては、私が気がかりになってるんだと。父も、本当の娘のように心配してくれている。
だから、余計な心配をかけたくなかったのかもしれない。

いつか分かってしまうだろうと思いながら。

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