私は強くない
「…え?嘘…」

目的のお店に行く途中、橋本君と話していたら、金谷君も知らない事を教えてくれた。

「それって、ほんとなの?橋本」

「あぁ、木村。陽一から聞いてないか?」

「何にも聞いてないわよ。聞いてたら私、奥菜の事ぶっとばしてるわよ!」

「だよなぁ。俺もさすがに、ひいたからな。その話聞いて」

ここへ来てまた拓真に、傷つけられないといけないんだろうか、私は…
吐き気が襲ってきていた。

「大丈夫ですか?慶都さん」

「あ、うん。大丈夫よ」

顔が真っ青になっていたのが、美波には分かっていたみたい。
顔を覗き込んで心配してくれていた。
私がここで倒れてちゃいけない。
やらなきゃ…

「倉橋」

「は、はい?」

思いもかけず、都築課長に呼ばれた。

「どうしたんですか?都築課長」

「お前、ちゃんと話したのか?あいつと」

…?
あいつ?
誰だろう…
都築課長が言うからには、社の人間よね。
拓真?
人事部だから関係ないかな…
ん?もしかして圭輔さん?

「名取だよ、名取」

「え?あ、はい?」

「隠すな、お前だって名取の気持ち知らん訳じゃないだろう?」

都築課長って、よく人の事見てるな、と思った。
さすが、人事部で課長やってるだけの事はある。
見ている所が違うのか…

「…で、どうなんだ?倉橋も彼氏とは別れただろう?」

「…は、はい?都築課長なんで…」

「知らないとでも思ってたのか?まぁ、これ以上言うとセクハラだから、突っ込めないんだが、同期だろ名取。ま、いろいろとな」

…圭輔さんと都築課長は同期だから、仲がいいのは知っていたけど、ここまでとは。
驚いた。
どう返事しようかと、思っていたら約束していたお店に行くに着いてしまった。

「あ、着きましたね。ここです」

とりあえず、お店に入る事にした、

『いらっしゃいませー』

「予約した倉橋です」

名前を告げると、そのまま奥の座敷にあんないされた。

ここまでは順調に計画が、進んでいた。

私と美波は、この後、驚くことになるなんて、この時は考えてもいなかった。
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