家出令嬢ですが、のんびりお宿の看板娘はじめました

「すまん」と小さく呻かれて、ロザリーの胸に、嬉しいような申し訳ないような複雑な感情が生まれる。
明らかにおかしいのは自分のほうなのに、祖父は自分を手放すことに悔恨を抱いているのだと思えて。

今だ加齢臭が強く顔をしかめそうになりながらも、自然に口もとには笑みが浮かんだ。

「おじい様、ありがとう。私、ちゃんと自分自身を見つけてきます。おやすみなさい」

祖父の頬にもう一度キスをして、ロザリーは部屋へと戻った。


 そして翌朝、執事のオルトンただひとりに見送られ、ロザリーは旅だった。

頼るところも何もない、ただ記憶にある街を探すのみの旅。
不安はもちろんあるけれど、感情が鈍くなっている今は足踏みしてしまうほどではない。
幸い、祖父が持たせてくれた資金は潤沢で、しばらくの期間ならなんとかなる。

とりあえずは、乗合馬車が通る近くの街まで。
そこからは勘の赴くまま、リルが住んでいたであろう街を探す。

こうして、ロザリーの旅は始まった。
目的地であるアイビーヒルにたどり着いたのはそれから一週間後のことだ。

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