重なるてのひら ~ふれあう思い~
「「メリークリスマス」」

昨日、宣言した先生は………

やっぱり泊まらないみたいで、今日もノンアルコール。

グラタンにパスタにサラダ。チキンにケーキ。

はぁちゃんと一緒に作ったから、樹先生達も同じメニューを食べてるの。

女子高生の料理の腕なんてこんなもので…………

いくらお姉ちゃんに習っても、そんなに急には出来ないもん。

グラタンだけは、生クリームとバター小麦粉、牛乳を使って

ルーは使わないで作ったけどね。

「旨い!」

「…………ホント?」

「うん、ホント。
俺のお袋の味は………尋になるかもね。」

10歳も年の離れた先生が

今まで彼女の手料理を食べたことがないなんてありえない。

優しいウソだって分かるけど……

先生がそう言ってくれるなら、それを信じる。

これからもっと勉強して自信を持って『私の味が先生の味だよ』って…

言えるように。

「ねぇ、先生。
いつか子供が出来て…………先生と子供たちが『これがウチの味』って
言ってくれる日が…………くるかな?」

「『くるかな?』じゃないよ………。
くるんだよ!
尋は……沢山の家族に囲まれて幸せになるの。
でも………取りあえず今は、美味しい料理を食べて………
俺と二人で幸せな時間を過ごそう。
はい、プレゼント。」

未来をサラリと語ってくれる先生。

明日があるか…………不安な時もあったのに……………

「ほら、泣いてないで開けてごらん。」

先生に促されるまま包みを開けると…………

カメラ……………。

「えっ。こんな高価な物…………」

いくら大人の先生でも……こんな高価な物って………

「いいから。
これから沢山、楽しい時間を残していこう。
もちろん、俺とだけじゃないよ。
樹やはぁちゃん。クラスメイトや姉ちゃんと。
尋が………楽しい!嬉しい!と思う瞬間を……いっぱい集めて。」

先生は………彼氏だけど…………やっぱり先生だ。

私に未来を………見せてくれる。

怖くて不安ばかりの私に

明日はきっと…………キラキラ輝いてると。

嬉しくて幸せで…………

先生、この気持ちはどうやったら伝わるかな??

泣きじゃくりながら、お礼を言おうと顔を上げると……………

カシャ。

「えっ!!」

泣いてブサイクな顔を、写されちゃった。

「尋の幸せそうな顔が撮れちゃった。
俺もお揃いを買ったから、どっちが良い写真が撮れるか
競争しようか?
これなら、修学旅行の時のように淋しい思いをさせないでしょう?
同じ所に居ても『綺麗だね』って言えないのは、淋しいからね。
その時直ぐは無理でも……一生同じ思い出が共有出来るのって
幸せでしょ?」って………。

そうな事言われて『ブサイクな顔を消して!』なんて言えないよぅ~

「………………ありがとう。」

「だったら、お礼ちょうだい。
教師の俺からキスは出来ないから…………ねっ!」

えっ!キス??

尋から!!

ニッコリ笑って、目を閉じる先生。

ウソ?!………本気??

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