僅か30センチの恋

向かいの部屋から灯りが見えて
ベランダへ出ると
丁度いいタイミングで
俺がずっと片思いをしている
幼馴染の神原 涼美が出てきた。

李人「お、以心伝心。」

スズに会うのは随分
久しぶりなように思う。
最近のスズは新しい彼氏に
夢中で、こうして
話すのは1週間ぶりだ。

涼美「リト、何飲んでんの?」

スズは昔から俺の事をリトと呼ぶ。
小さい頃、背が小さかった俺は
リトル李人とよくいじめられていた。
そんなマイナスな事さえも
スズはプラスに変えてしまう。

スズが俺の事をリトと呼ぶように
なってから周りの連中もこぞって
そう呼ぶようになり、いじめの
言葉からあだ名へと変わった。

李人「ん?ビール。スズも飲むか?」

涼美「うん。飲む!」

李人「取ってくるよ。」

冷蔵庫から取り出したビールを手に
ベランダへ戻るとそれを手渡す。
スズの部屋と俺の部屋のベランダは
僅か30センチほどの距離にある。
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