僅か30センチの恋
今すぐにでも否定したかった。
違うんだ。全て誤解なんだって。
でも、否定するって事は
スズを騙したって伝える事と同じ事で
そんな酷な事を今更言える訳がなかった。
後悔するとは思っていたけど
やっぱり後悔した。
やっぱりスズを騙してまで
手に入れるものじゃなかった。
隣にいるのに、もう二度と
手に入らない存在のように思えた。
涼美「リト。はい。」
スズがティッシュ箱を手渡す。
その意味が分からなくて
ほんの少しだけ、思考が止まった。
涼美「泣くほど感動する話かな?
やっぱり、私には
リトの好みは分かんない。」
ああ、何だ。俺、泣いてたのか。
でも、そうじゃない。
今の涙の理由は映画じゃなくて
今後の俺たちの事だったけど
今更、そんな事を言えるはずがなかった。