明日も、コンビニ裏で
「へっ」
意表を突かれて、思わず変な声が出た。
みっしりと筋肉のついたおじさんの腕はよく日焼けしていて、その指先に握られたアイスが今にもあたしの口元に届きそうだ。
「いいよ、一口」
「…や、いいですよ、そんな」
「食べたかったんでしょ?」
そこまでされて断る術を、あたしは持たなかった。
それに、この人は悪い人じゃないと直感が告げていた。

思いきって、あたしは目の前のMAXバーチョコミントにかぶりついた。
ひんやりとクールな甘い塊を、口でしっかり受け止める。
おじさんは満足気にうなずくと、あたしのかじったアイスに口をつけた。

どきどきしていた。
あたしは無言で自分のバニラアイスに戻ったけれど、全神経でおじさんのことを意識していた。
近くにママチャリが泊まり、前かごから降ろされた子どもが物欲しげにこちらを見ながら母親に手を引かれてゆく。

「高校生?」
先に食べ終わったおじさんがたずねてきた。まだ初夏なのに、本当によく日焼けしている。
「…うん」
「中央高校?」
制服でわかったらしい。
「うん」
あたしも食べ終わって、べたつく指先を持て余しながらごみをまとめた。
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