黒縁眼鏡と銀縁眼鏡
北嶋さんの仕事は医療系の研究者で、私はその助手をしていたらしい。

二年ほど前から付き合い始め、研究が一段落した最近、結婚を考えていたという。

「その、……事件って?」

お代わりのカフェオレを手に、暖炉の前に座る。

北嶋さんのおじさんの別荘というここは、いわゆるログハウスって奴だ。
吹き抜けの暖炉のあるリビング、中二階のベッドルーム。
あとはキッチンの裏にトイレやバスルームがあるんだといっていた。

「ああ。
知重にしつこくつきまとう、ストーカーがいてね。
……まあ、僕の同僚なんだけど。
そいつ、とうとう思いあまって知重を拉致監禁したんだ。
それが一週間前の話」

多分、嘘ではないんだと思う。
私の両手首、両足首にも分厚く巻かれた包帯。
少し動くだけでも身体はふらふらで、衰弱してるのがよくわかる。

「やっと救出したのが昨日。
でも、錯乱してたし、記憶にも障害が出てるみたいだったから、療養させようと思ってここに連れてきた。
ここは人里からも離れてるし、落ち着けるからね」

パチパチと暖炉の中で薪が爆ぜる。
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