ラットラズベリー
はじめの一二歩はとことん重い
私にとって悪夢でしかなかった卒業式はとうの昔の一年前の出来事になった。


私は高校二年生になりそれなりの青春を謳歌していたのだが、私の胸の内には奴への復讐心は沸々と煮えてきていた。


そのために中学時代ずっと貫いてきたスタイルを捨てた。


三つ編みを解いて眼鏡もコンタクトに変え無駄な贅肉も落とし高校デビューは無事に成功した。


成功したがそれだけで終わり高校二年生になってしまった。



私は別に爽やかな青春をしたい訳じゃない、ただイケメンな男と付き合いあの男に復讐したいのだ。


それなのになぜ私は深夜1時にペンタブを握りしめているのだろう。


「新刊二冊とかアホなんじゃねぇすか⁉︎孝彦さんよぉ!!」


「うるせぇ小娘!口より手を動かせ!」


何故か私は一週間後に迫ったオタク達の関ヶ原にて販売する同人誌を描くのを手伝わされている。


この中谷孝彦という悪魔のような男によって


「孝彦さん!ここ腕がヤバい方向に曲がってるんで修正しときます!」


「あぁ、頼んだ…なぁ、タバコ吸ってきていい?」


「今行ったら骨は残らないと思ってください」


この孝彦さんは、ある業界では神と崇められるほどの同人作家さんで私の遠い親戚。


親戚って言ってもほぼ血の繋がりはないけど私からすればお兄さんみたいな人だ。


そして今、そのお兄さんみたいな人の同人誌を製作するのを手伝っている。


昔から絵は得意だったけど、17歳のJKになんてもん書かせてるんだ。


ちなみに内容は女の子が性的に拷問されて闇堕ちする話です。


本当に何書いてんだ私は。


そして何書かせてんだこの髭面やろう。


髪は痛みまくってモジャモジャで片目しか見えねぇし隈酷くて人相悪いし。


それに無精髭もあるから小汚い。


いつもイベント前には処理してるけど、正直毎日やってほしい。


「孝彦さんっ!終わった!かえっていい⁉︎」


「おめでとう、まだ半分残ってる」


天に召されてしまえと思った。


あんまりダァと叫びたいが叫ぶ労力が勿体ない。


「孝彦さーん。今日泊まってそのまま学校行く」


「分かった、親御さんには伝えとく」


孝彦さんは肩と耳でスマホを固定して作業の手は止めなかった。


流石プロだなと感心したが書いてるのはエロシーン。


尊敬できる要素が飛び散りました。


もう一回集中力を高めるように深く深呼吸してペンタブを握る。


今は復讐のことは忘れよう。


今、この時必要なのは幼女に対する愛と純粋なエロスだっ!!


そして私と孝彦さんは眠れない夜を過ごし無事に作業は終了。


私はフラフラな状態で学校に向かうのだった。
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