一途な御曹司と極あま初夜事情~クールな彼は独占欲の塊でした~

彼が全国放送で流されたスキャンダルを指しているのだということはすぐにわかった。

不意打ちの質問に、つい、かぁっ!と頰が染まる。すると、それを見てわずかにまつ毛を伏せた瀬戸は、私から目を逸らして続けた。


「本気じゃないならやめとけよ。お前が御曹司サマと釣り合うわけがないんだからさ。」


(…な…っ!!)


「そんなの私が一番わかってるよ!!」


去り際に、つい、そう叫んでツカツカとエレベーターを出る。

なんなの、何も知らないくせに。

現状で一番振り回されてるのは、世間でも久我さんのファンでも報道陣でもなく、私なのに。

廊下をスタスタと進みながら、もやもやした感情が胸の奥から込み上げてきた。


ーーー
ーー


遠ざかっていく彼女の背中。

あんな言い方をしなくてもよかった。

脳裏をよぎるのは、問いを投げかけた時の彼女の赤く染まった表情。


「…あのクソ御曹司…」


ぼそり、と呟いた瞬間。エレベーターの向こうに、すっ、と現れたのは、掃除用具を乗せたカート。


「瀬戸くん。心の声が丸聞こえだけど。」


「!」


ニヤリ、と笑った三嶋 唯の、全てを察したような笑みが、閉まりゆくエレベーターの隙間から見えたのだった。

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