大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい
菜生の体から香る香りは、アロマ効果があるのか疲れも取れる気がする。
ある程度堪能したら、彼女を膝の上に置いて抱きしめるのは、毎回の事ながら恥じらいを見せる姿が可愛らしいからだ。
それなのに、膝の上にいる彼女は可愛くない事を言う。
「ねぇ、なんでここに来るの?」
「ハァッ、それを言うか!今だにおまえは連絡先を教えてくれないし、会う方法はここに来るしかないだろう」
「別に抱きたいなら来てもいいけど、ただ寝るだけなら家に帰ったら?」
「お前、やっぱバカだろ!会いたいから来てるって言ってるのに、抱くのはその雰囲気でだな…」
伝わらない思いに焦れてしまう。
どうやったら、伝わるのだろう?
「あーもう、兎に角、俺の連絡先教えてあるのに一度も連絡して来ない、家も知ってるのに会いにも来ない薄情な奴に会う方法は、俺が来るしかないんだよ」
「一週間に何回も会わないといけない?奏、色々用事あるでしょう?」
俺は、毎日でも会いたいのに、菜生はそうじゃない。それに、『色々あるでしょう?』って遠回しに他の女と会わなくていいのかと言う始末だ。
女達からの電話はかかってくるが、お互い割り切った関係なのはお互い様で、断ればそれで済む話だった。