大人の恋は複雑で…素直になるのは難しい

「だよな…俺、今は飯より寝たい。お前は?」

「うーん…まだ動けない気がする」

「なら、こっち来い」

腕をとられて倒れると向き合って抱きしめられる。

「目が覚めたら遅い昼飯食って、それから家まで送る。まだ寝てろ」

「眠くないんだけど!」

「俺は眠い。抱き枕になってろ」

言うや否、寝息を立てる男に苦笑していた。

(まぁ、いいか!)

慰めてもらったし、抱き枕ぐらいなってあげる。

そして、いつのまにか私も寝ていた。

気がつけば、窓の外は夕暮れの空。

本日、2度目のやってしまった感!

隣は、もぬけの殻。

シャワーを浴びてきたのか、濡れた頭をタオルで拭きながら上半身裸の男がドアを開けて入ってきた。

「起きたか?」

「起きたかじゃないわよ。もう夕方なんて最悪。起きてたなら起こしてよ」

「よく寝てたから起こさなかった。腹減っただろう…飯いに行く前にシャワー浴びて来いよ」

おかげでたくさん寝てスッキリしている。

だけど、素直にお礼が言えない。

「もういい…ご飯いらない。家まで送って」

家に帰るだけだからと、シャワーをかりて崩れた化粧も直さずに送ってもらった。

「じゃあ」

「あぁ」

もう、会う機会もないだろうと別れたはずだった。
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